SUGOI JAPAN Award2016 マンガ、アニメ、ラノベ、エンタメ小説。日本のスゴイ!を、世界のスゴイ!へ。

スペシャルレポート 2016 Vol.06 世界中の人、テクノロジーと繋がって 体験したことのない エンターテインメントを創る

世界中の人、テクノロジーと繋がって
体験したことのない
エンターテインメントを創る

――『DEATH STRANDING』監督/ゲームクリエイター・小島秀夫インタビュー(後編)

 常に斬新なゲームを創り続けてきた、ゲームクリエイター・小島秀夫。長く所属したゲーム会社から独立し、2015年12月に設立されたコジマプロダクションにて誰も見たことがない新作ゲームPlayStation 4用ソフトウェア『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の制作に挑む。単なるゲーム開発者の枠を超えた彼のことを、人は敬意をもって“監督”と呼ぶ。SUGOI JAPAN の目的が「すぐれた日本のコンテンツを世界に発信する」ことだとしたら、小島監督は既に世界を舞台に闘い、勝ち続けてきた最高峰のクリエイターなのだ。そんな監督に、新作ゲームのこと、そして、世界と向き合うクリエイターのスタンスについてうかがった。すべてのクリエイターよ、コンテンツファンよ、監督の言動に刮目せよ!

遊びで人は進化する。つながりができる。だから、
遊びを、エンターテインメントを、死ぬまでやろう

日本にこだわらず世界を舞台にして
グローバルな巨大マーケットで勝負する

――小島監督は日本が舞台のゲームはつくりませんよね。それには理由があるのでしょうか?

小島 日本を舞台にしたくないわけではなくて、自分がやりたい、自分がほしい映像をつくるには日本が舞台だと難しいからです。人種や民族、信条や宗教を盛り込んだゲームをつくろうとすると、どうしても日本以外の地域や国、世界を舞台にしたほうがつくりやすいし、僕の作風と合う。
 それでも、かつては日本のマーケットを中心につくっていましたが、PlayStationが登場して激変しましたね。それこそ、アメリカに一番大きなマーケットがあって、次はヨーロッパ。日本やアジアはこの2つと比べると、だいぶ小さい。そうなると、アメリカやヨーロッパの人が喜ぶようなことをしたいですし、そこにフォーカスしてしまうんですよ。

――『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』に出演するノーマン・リーダスさん、マッツ・ミケルセンさんもハリウッドで活躍されています。監督はどのようなスタイルでゲームをつくろうとしているのでしょうか?

小島 グローバルな巨大マーケットがあるなら、そこで勝負して、「これはスゴイ! 面白い!」と言われたいじゃないですか。
 僕ね、子供の頃に『スタートレック』をテレビで観て、びっくりしたんです。東西冷戦時代につくられた作品なのに、エンタープライズ号の第一艦橋には人種に関係なく、アフリカ系やアジア系の人もいて、それこそ宇宙人のスポックまでが同じ宇宙船に乗って、別の生物を探しにいくというストーリーに感動したんです。将来はそうやって差別や区別がなくなっていくのか。これが本当のグローバルやぞ、と。
 ハリウッドのスタイルはエンタープライズ号に似たところがあって、現実にはいろいろ問題があるかもしれませんが、世界各地から人がやってきて、ハリウッドに集まる素材や機能や技術を利用して、映画をつくって、成功すればまた次の映画もつくれるし、失敗したら去る。仲良くしているギレルモ・デル・トロ監督はメキシコ人で、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に出演していて『DEATH STRANDING』にも出てもらうマッツさんも、マッツさんを紹介してくれたレフン監督もデンマーク人。それでも彼らは子供の頃から『ゴジラ』を含めて世界中のものを観ているし、作品はワールドワイドでいける人たちなので話が合う。違うのはしゃべる言語だけですよ、ホントに。
 だから、「うちのチームはエンタープライズ号や」っていつも言っています。エンタープライズ号にお金を出している、あるいは組み立てをしているのは日本かもしれないけど、あくまでスタート地点。そこから出発するのだから、一緒に乗る人がどこの国の人であるかはこだわりません。出身国は関係なくて、僕がつくりたいものを一緒につくれる人に集まってほしい。前編でお話したように、ゲームエンジンはオランダのスタジオと一緒につくっているし、向こうにコジプロの分室をつくって、互いに行ったり来たりする。そういうやり方で、僕らはつくっていこうと思っています。

――小島監督は海外でたくさんの人と会っていますし、膨大な数の作品を観たり、読んだりしています。そういう監督は「COOL JAPAN」について、どう思っていますか?

小島 難しい質問ですね。料理に例えると、“寿司”は世界中で評価されて食されているけど、それは日本の“ローカルな料理”だという点が評価されていますよね。あくまで日本をそのまま持って行っているのが評価のポイントです。異質さが受けているということで言えば、海外のミニシアターで上映される日本映画と似ています。異質な物だからコアな人たちやメディアには評価されるけど、一般の多くの人たちは観に行こうとは思わない。逆に、日本のミニシアターにかかるハリウッド映画ではないヨーロッパやロシア、アジアの映画は、日本のコアなファンにしか届かない。それはそれでいいのかもしれませんが、今、ネットで世界中がつながって、数時間あればどこでも行ける時代になったのに、いつまでも“ローカルな料理”で勝負するのはどうなのかな、という思いはあります。
 “寿司”が世界の文脈に組み込まれて“グローバルな料理”になるにはどうすればいいか。例えば“テリヤキ・バーガー”は、アメリカの“ローカルな料理”が日本の文脈で消化されて、“グローバルな料理”として評価されています。日本人のシェフが向こうの人材と食材を使って、イタリアンなりフレンチなりアメリカンなりをつくるというのがハリウッドで、それこそが本当のグローバルですよね。今、僕は日本にいますけど、『DEATH STRANDING』は世界に向かってつくっています。ガラパゴスと自嘲するくらいなら、グローバルなシェフになりたい、と僕は思います。
 トリュフォーは英語がしゃべれなかったけどヒッチコックといい友達になったそうです。そういうつながりが日本人のクリエイターには少ないような気がします。僕は内にこもって同じ国の人とだけやっていくというのは性に合わないんで、海外にいる人や会社をすぐに訪ねていく。たいていは、みんなウエルカムですぐに会ってくれますよ。アウェーでの失敗を恐れて閉じこもっているなら、そもそもこういう仕事はしたらダメですよ。

シンギュラリティ目前。すべてが機械化され
能動的な行為は「遊び」だけになる

コジマプロダクションのロゴムービー。アイコンであるルーデンスが未踏の地に一歩を刻む

――「サピエンスからルーデンスへ」。コジマプロダクション(以下、コジプロ)のHPでは監督からのメッセージがトップに掲げられています。監督が目指すものだと思うのですが、どういう意味が込められているのでしょうか?

小島 (ホモ・)ルーデンスとは「遊ぶ人」という意味です。遊ぶことで人は進化していくと、僕は考えています。
 コジプロのロゴムービーはルーデンスが歩いている映像で、僕らがエンタープライズ号みたいなのに乗って、遊びを届けに行って、遊びを基本に新しい社会ができる…そういう想いを込めてます。僕はつくり手なので、ルーデンスであるとともにファーベル(創る人)。遊ぶ人がいずれはファーベルになる…というパターンをやりたいな、と。「ゲームでオレの人生が変わった。誰がつくってんねん。小島秀夫か。オレもこんな仕事をしてみたいな」と思って、自分がつくり手になる…そういうつながりを大切にしたいんですよ。
 阪神大震災があったとき、家が壊れてしまった子供たちが外で、携帯型ゲーム機で遊んでいた様子が忘れられません。遊びがあったからこそ、いろんなことに向き合おうとしているし、できたんです。そこは僕の仕事だと思っています。米や水を何トンも届けられませんが、僕は遊びを届けることはできます。

――これからゲームはどのように変容してくと考えていますか? また、どんな可能性があるのでしょう。

小島 これからはゲームと映画とサービスが融合して、生活にもっと入り込んでくるので、あえて「ゲームをやろう!」という感じじゃなくなると思います。逆に「遊び」という行為の本来の意味がより際立ってくると思います。自発的な行為こそが「遊び」だと明確になるはずです。ほとんどのことは機械(AI)が全部用意してくれる世界がやってきます。すでに自動車は自動運転できるようになっていますし。照明も室温も個人に最適な状態にコントロールされて、「そろそろのどが渇いているだろう」と飲み物も用意されて、何もかも自分でしなくてよくなっていく。フラっと遊びにいって、何かと遭遇する危険も回避されて、何をやっても安全になるかもしれない。人との付き合いも、ある少年が好きな子と会ったとき、彼が聞きたくない彼女の言葉を聞こえなくして、傷つかずに済むとか…。
 そうなってくると、遊びだけが能動的な行為として残るのではないでしょうか。お互いを遮蔽するものを取り除かないと相手とは遊べない。遊びがあるから人と出会うとか、人とつながりができるとか、知らないことを知ったり、体験したりする面があるんですよね。遊ぶ相手がいるからこそ、そこには偶然の出来事や冒険が待っている。そう考えて、「遊びを、エンターテインメントを、死ぬまでやろう」と決めたんです。
 僕は53歳。がんばれるのもあと10年くらいですから、後輩を育てるとか、どうのこうのとかは何も考えていません。あと10年で何を生み出せるか、そのためにどう利用したろかって思っていますから(笑)。でも、その中でも這い上がってくる人はいると思うので、チャンスはあげたい。それも、ルーデンス(遊ぶ人)からファーベル(創る人)へのつながりですしね。

(2016年11月18日、品川にて/取材・文=東海左由留(SCRIVA)、撮影=藤井 徹)

12月27日より前後編で、コジマプロダクションの内部リポートが掲載されます。題して、「コジマプロダクション----宇宙に行くための “輝ける資質(ブライト・スタッフ)” TEXT by 矢野健二」
世界に、いや宇宙に羽ばたくコジプロの解析リポートをお楽しみに!

PROFILE

小島秀夫こじま・ひでお

1963年東京都世田谷区生まれ、大阪府・兵庫県育ち。ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表取締役。1986年、KONAMIにプランナーとして入社。1987年、初監督作品「メタルギア」でデビューしステルスゲームの原点となる。2015年12月、コジマプロダクション設立。2016年E3において、独立後初作品となる『DEATH STRANDING』の製作を発表。ビデオゲーム業界のアカデミー賞と言われる「D.I.C.E. Summit 2016」でHall of Fame、全世界のゲームメディアが選ぶゲームアワード「The Game Awards 2016」でIndustry Icon award受賞。

http://www.kojimaproductions.jp/#index

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