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スペシャルレポート 2016 Vol.04 アニメで“伝える”ために いちばん必要なものとは

アニメで“伝える”ために
いちばん必要なものとは

――アニメ『甲鉄城のカバネリ』監督・荒木哲郎インタビュー

 アニメ『進撃の巨人』を手がけ、数々のアニメ賞グランプリを受賞し注目を浴びた監督・荒木哲郎とWIT STUDIO。彼らが再びタッグを組んで制作された『甲鉄城のカバネリ』は、シリーズ構成・脚本に『コードギアス 反逆のルルーシュ』などの大河内一楼、音楽は『進撃の巨人』に引き続き、『アルドノア・ゼロ』や『七つの大罪』などの澤野弘之、そしてキャラクター原案には「ガンダム」シリーズや『超時空要塞マクロス』などの美樹本晴彦という豪華スタッフが名を連ねることでも注目されたオリジナルアニメだ。「カバネ」と呼ばれる人ならざる怪物の脅威に怯える人々の戦いを描いた本作は、2016年12月31日より総集編の劇場公開も決定。その濃密な世界観はいかに生まれたのか、監督・荒木哲郎にお話をうかがった。

ためらいなく命を捨てる覚悟を決めたとき、
人は本当の意味で“何か”になる、その瞬間を描きたかった

大事なのは、生駒と無名が愛されること
そのためにはキャラクターが持つ愛嬌が不可欠と気がついた

――鋼鉄の皮膜で覆われた心臓を撃ち抜かれない限り滅びない怪物「カバネ」。噛まれた者も死後蘇り「カバネ」と化す。極東の島国・日ノ本(ひのもと)を舞台に、カバネに立ち向かう少年・生駒(いこま)たちの戦いを描いた本作は、「スチームパンク」「チャンバラ」「列車もの」「ゾンビもの」「ロードムービー」など、さまざまな要素を含んでいます。

カバネの脅威から人類を守るため、“駅”をつないで走行する装甲機関車“駿城”

荒木 僕の好きなものがたくさん入っているので結果的にはそうなりましたが、世界観をつくりあげる当初、意識していたのは「時代劇であること」と「人々が身を隠す“駅”と呼ばれる砦を、“駿城(はやじろ)”と呼ばれる装甲蒸気機関車で移動する」という二つだけでした。あとの要素は、その設定のもとで展開される世界では、人々はどんなふうに生きてどう戦うだろう、侍がいるとしたらどんな存在だろうということを考えていくなかで自然と備わったもの。たくさんの要素を詰め込もうと思ったわけではありませんし、むしろ“なんでもあり”にならないように気をつけないといけないと思っていました。
 たとえば、どうすればカバネを倒せるかというルール作りは重要でした。「心臓皮膜を貫通すること」を唯一絶対条件にすることで、そのための武器を発明する主人公像が生まれたのですが、その縛りがないとやっぱり、“なんでもあり”になってしまいますからね。いつかカバネを倒すと誓っている主人公が、そのために何をするか、何ができるのかを描くことが、物語にドラマ性を生む重要な鍵となるんです。

――独自の武器でカバネに立ち向かう少年・生駒ですが、第1話ですでにカバネに噛まれてしまいます。研究による知識のおかげでカバネ化は食い止められましたが、かわりにカバネでも人間でもない「カバネリ」となりました。これは悪魔でも人間でもない『デビルマン』的キャラクターですね。

カバネでも人でもない“カバネリ”となった主人公・生駒

荒木 僕は基本的に、大きな禍によって日常が音を立てて崩れていく話が大好きなんです。くわえて、逆境に追い込まれている人が好き。『デビルマン』ものの系統作品に共通した魅力、すなわち人ならざるものにその身が変化してしまい、大きなマイナスを課せられた主人公が、かわりに大きな力を得るという物語にはロマンがあります。憂うべき状況こそが、主人公をヒーローたらしめる。そんな、この世に鬱憤を抱えた少年がヒーローになる瞬間に僕は興味があって、その姿を描いていきたいと常に思っています。本作においては、「カバネリになった少年が少女を救うために命を捨てる」という、その生き様を描くことが一番重要なポイントでした。もう死んでもいいと思ったとき、人は何より輝くのではないか。その瞬間のエモーションを描きたかっただけなのに、気づいたら設定が膨大になっていて、なんでこんなに大変なのかなと自分でも不思議だったくらいです(笑)。

――もう一人の主人公である、12歳の少女・無名(むめい)も印象的でした。生駒と出会うより前にカバネリとなった彼女は、自覚的に覚悟をもってカバネと戦い、生駒を引っ張っていく強さがあります。

並外れた強さを見せる12歳の少女・無名もまたカバネリだった

荒木 彼女をどうやったら魅力的に描けるか、どうしたら一番かわいくなるかということは果てしなく考えました。というのも今回、生駒と無名という二人のペアを主人公として魅力的に描くということが、本作をつくるうえで挑戦してみたかったことの最も重要なひとつなんです。個別にみれば、ともすると、いけ好かなく感じられる二人のキャラクターが、喧嘩したり励まし合ったりするさまを描くことで好ましく感じられるようになっていく。そんな、“二人であること”で完成する魅力を描きたかった。架空世界をつくったり、ゾンビものを手がけたり、CGでメカを描いたりすることはこれまでもやってきましたが、視聴者にちゃんと愛されるキャラをつくるということを、今回、はじめて真剣に考えました。結局のところ、視聴者にキャラクターを好きになってもらわないことには何も始まらないんですよ。作品を最後まで観続けてもらえるかどうかは、主人公にそれだけの魅力が備わっているかにかかっていますから。
 そのためにも、美少女としての無名はもちろん、生駒にも愛嬌をもたせることを意識しました。生駒は、決して誰からも好かれるような爽やかな性格をしていません。世の中を疎んでいるし、俺はこんなに頑張っているのにひとに見下されている、というようなひがみもある。だけど一見、マイナスの要素のほうが多そうに見える人間を好ましく見せることができたら、それは、ただ単にいい人を描くよりもずっと魅力的になるんじゃないかと思ったんです。生駒のまっすぐな正義感はやや狂気的でもあるし、無名は乱暴者で感情の機微に対してもドライな一面がある。その二人がともに行動することで、マイナスが増幅するのではなく、逆にそれぞれの本来的な人のよさや愛らしさが引き出されていくような関係を描くことができれば、よりいっそう愛されるキャラクターになるのではないかと。ビジュアル面にも気を配りました。物語の性質上、現場のアニメーターさんはついつい表情を険しくしたり筋骨隆々にしたりしがちだったんですが、目を大きくしたり体つきを華奢にするなど、とにかく生駒と無名をかわいらしく描くようお願いしていました。愛嬌が何よりも大事だと思っていたので。

――愛嬌に対するこだわりは、これまで作品作りをしてきたなかで体得したものなのでしょうか。

荒木 キャラクターが愛されることの重要性、という意味ではそうですが、愛嬌のヒントになったのは映画『桐島、部活やめるってよ』で神木隆之介さんが演じた前田という少年なんです。前田は映画好きの熱血少年で、そのパーソナリティは実はアニメに登場する熱血主人公に共通するものがあるんですが、視聴者も周囲のキャラクターたちもその熱血性をあまり意識しないんですよね。どちらかというと、かわいらしくて健気で、ちょっと面白い少年といった認識の人が多いんじゃないでしょうか。それはなぜだろうと考えたときに、結局は愛嬌なんじゃないかと思い至ったんです。彼の愛らしさが、熱血の延長で生まれがちな暑苦しさやそれに対する抵抗感をうまく消している。それがキャラクターづくりのヒントになり、彼の存在が、生駒の最終的なモデルにもなりました。
 もともとのモデルは、映画『タクシードライバー』でロバート・デ・ニーロが演じたトラヴィスだったんですけどね(笑)。実をいうと、『甲鉄城のカバネリ』の物語骨子は『タクシードライバー』なんですよ。「世の中をひがみ、いつか一花咲かせたいと思っている青年が、あるとき一人の少女と出会う。その少女の境遇を縛っている男をこの世の悪と見定めて倒そうとする、そのために自分の命を捨てる覚悟をするが、最後には生還する」という大枠で語れば、両者は同じ。その上で、アニメ視聴者にも受け入れられやすい、もう少し口当たりのいいキャラクターとしてトラヴィスを描くにはどうしたらいいかな、と考えたときに、神木隆之介さんが演じた前田の愛嬌が加わって生駒が生まれたというわけです。

――意外なエピソードです。もしかして、生駒の親友・逞生(たくみ)は、『桐島~』で登場した前田の友人・武文がモデルになっているんでしょうか。

荒木 存在としてはそうですね。作中に、キャラクターを大切にしてくれる人を存在させるというのが、視聴者にその人を大切に思ってもらうための大きいコツのひとつだと思っていて。それが、『桐島~』の前田にとっては武文であり、生駒にとっては逞生でした。キャラクターが愛されるためにはさまざまなテクニックがあるんだということを、僕は本作ではじめて真剣に勉強し、実行したんです。どんなに語りたいテーマがあろうと、高いクオリティのフィルムがあろうと、キャラクターが愛されなければすべて意味がない。だから、『甲鉄城のカバネリ』でいちばん大事なのは生駒と無名が愛されることだと思いながら作品をつくっていたし、つくり終わった今、自分でもそれがある程度できたと手ごたえを感じています。

描きたかったのは己の恐怖と、恐怖に立ち向かう人々の物語

――二人が心を通わせ合うエピソードのひとつとして、第7話の日常シーンがあります。七夕のイベントに興じたり、神社の境内でただおしゃべりをしたり、生駒や無名たちの素顔が見える象徴的な話でした。

荒木 第7話は、一切戦わない話にしようと決めていました。それ以外の話は、コミカルなシーンですら血みどろのなかで描かれるのですが、第7話だけは絶対に血を流さずに進めようと。物語のボリュームが大きい本作を12話におさめるのはなかなか大変な作業だったので、カバネとの戦いを描かない回を一つでもつくると前後がきつくなってしまうとは思ったのですが、それでも“ひたすら平和”な回をつくりたかった。生駒と無名だけでなく、登場するキャラクターたちみんな、そして視聴者のみなさんにとっての“戻りたい日”を描きたかったんです。七夕の短冊に「生き延びたい」と書いた逞生の前で「生きているだけでいいのか?」と問う生駒の姿に、みんなも生きる希望と夢を語りはじめる。こんな時代だからこそ、と。そして無名もまた「おなかいっぱいお米が食べたい」と語る。それはその直前に、生駒に「無名の本名である“穂積”はきっと、お母さんがおなか一杯お米が食べられるようにという願いをこめてつけたんだ」「カバネと戦うのはもうやめろ、俺がお前を人間に戻してやる」と言われたことへのアンサーなのですが、無名は生駒に直接はそれを告げない。友達である鰍に話しているのを、生駒はたまたま耳にするんです。その多幸感につつまれる感じがうまく伝わっていたらうれしいですね。とはいえ、その次の回に、無名の主人である美馬(びば)が登場することで二人はさっそく仲違いをしてしまうんですが……。二人の間に入る亀裂を描くうえでも、この回は必要でした。

――役立たずに価値はないという教えを無名に叩き込んだ美馬は、最終的な敵として立ちはだかります。物語が進むにつれどんどん仮面が剥がれ落ち、狂気をあらわにして行きます。

無名の主たる美馬、その目的と真意とは――

荒木 僕は、知的狂犬タイプのキャラクターが敵として一番好きなんです。賢く追いつめてくるうえに、残忍で迷いなく悪を成すという。無名はしかし彼に完全なる忠誠を誓っていて、生駒はそれをおかしいと思って糾弾する。それゆえに、せっかく心を通わせ合った二人が仲たがいをしてしまうはめになる。無名をいかに美馬から引き離すかというのが、後半の生駒の戦いです。悩んだのは美馬のキャラクターづくりよりも、なぜ無名がこれほどまでに美馬に心酔しているのかということですね。どんな日々を過ごしたら、この二人はこれほどの信頼をもって結ばれるのだろうと。美馬が本当に、ただ残忍なだけの男で、無名を顎で使い続けていたのならば、無名だって美馬を信頼しようという気にはならなかったはず。TVシリーズという尺制限がある都合上、どうしてもすべてを描くことはできませんでしたが、目的のためにはさまざまなものを斬り捨てる人間だけど、おそらく美馬にとっても無名を大事にしたいと思う気持ちはあったはずだということを、無名役の(声優)千本木彩花さんとも、美馬役の(声優)宮野真守さんともずいぶん話しあいました。
 おかげで、最終話の無名と美馬が対峙するシーンは、僕が想定していた以上に慈しみのあるものになったんですよ。美馬の無名に対する愛情が、声の演技から滲みでていたから、絵も想定していたよりも優しいものに変更しました。役者さんが心から演じた芝居が作品にフィードバックされる、その瞬間を見られただけでも生きていてよかったと思いましたね。

――美馬は無名にとって決別すべき重要な存在ではありますが、生駒との対比も強く描かれていたように感じました。12歳のとき、カバネに噛まれた妹を見捨てて生き延び、罪悪感を抱えている生駒と、同じく12歳のとき、カバネのはびこる戦場に置き去りにされ見捨てられてしまった美馬。ともに、恐怖心や屈折した感情に支配されそうになりながら戦っていますが、その発露の仕方が真逆であり、だからこそ無名を挟んで対立してしまうという構図になっています。

荒木 まさにそれを感じてもらいたくてつくった作品でもあります。本当は、美馬というキャラクターをもっと時間をかけて描きたかった。ですが先ほども言ったとおり、TVシリーズという限られた尺のなかではなかなか叶わなくて。伝えきれなかったものをあとから作り手が説明するほどみっともない事もないですが、そこをあえてお話させていただくと、本当の敵はカバネではなく己の恐怖。物語の途中で、カバネは恐怖によって集うという性質も明かされますが、本作は、恐怖と向き合う人々がいかに戦っていくかという物語なんです。
 1話のモノローグで生駒は「生きるために必要なのは、隠れて身を守ることではなく、怯まずカバネと戦うことだ」と語りますが、生駒の想いを知らないはずの美馬が、初対面の彼に対して全く同じことを言うシーンがあります。生駒と美馬の基本的な思考は同じなんです。ではなにが違うのかというと、人を大事にするかどうかです。妹を見捨てた負い目を持ち続けている生駒には、同じことを繰り返さない、誰も見捨てないという使命がそなわっている。対して見捨てられた側である美馬には、正義を貫くには切り捨てていかなくてはいけないのだという思いがある。それが無名に対する態度の差でもあり、二人の対立を生んでしまっているんです。でも実は、美馬のほうは、境遇も含めて生駒が自分と似ていることに最初から気づいていて。無名の前ではあまり興味のないふりをしていますが、自分とよく似た生駒がいったいどれほどのことができるのか、意地悪く試し続けているんですよ。

――第10話で、捕らえられた生駒が逞生たちと反乱を起こすとき、すべてを見抜いていた美馬が、あらかじめ脱出に必要な鍵をニセモノにすり替えておくシーンがあります。でも美馬ならそもそも、反乱そのものを起こさないようにすることもできたはず。それも試していたことでしょうか。

荒木 あのとき美馬が「不合格だ」と言い放つのは、自分とよく似た生駒ならもっとやれるだろうと思っていたから。鍵がニセモノかもしれないと疑うこともできただろうと。だけど生駒はできなかった。その程度だったのかと、美馬はそこで一度、生駒に失望するんです。だけど美馬は美馬で、自分のなかにある恐怖心をずっと克服することができなかった。彼は自分が大変な臆病者だということを自覚していて、それを隠したいという一心で生きている。だけど生駒は違う。彼は最初から、刃を向ける相手を見誤らないように務めてきたし、周囲が「カバネかもしれない」という恐怖心で人を殺そうとするなかでも立ち向かってきた。最終的な生駒と美馬の対決で、勝利を決定づけたのは結局その差です。己の恐怖を克服して、いま死んでもいいという気持ちになれるかどうか。ためらいなく命を捨てる覚悟を決めた瞬間、人は本当の意味で“何か”になれるのではないかというその想いを、二人の姿に込めました。もう少し尺があれば、美馬の立場で見えた風景を描くことができて、観終わったあとの心地をもっとわかりやすく豊かにすることができたかもしれないと思いますが……ヒントだけはそこかしこにちりばめてあるので、ぜひ見返して味わってみてほしいですね。

押しつけの思いやりが、誰かを救うこともある

――無名は12歳、生駒と美馬が決定的な体験をしたのも12歳ですが、その年齢になにか大きな思い入れはあるのですか。

荒木 結果的にそろってしまいましたが、そこに意図的なものはありません。ただ、無名に関しては「アイデンティティが不確かである」という側面が必要でした。美馬という父親がわりのような存在と、自分自身で見つけた生駒という新たな信頼できる相手のあいだで彼女は揺れ動きます。ずっと教え込まれてきた価値観に完全に染まっていた人が、はじめて価値観の多様性に気づいて自分の手で選びとる、その瞬間を迎えることが「大人になる」ということ。その脱皮にふさわしいのは、学校で教わったことを正義として口にしながら自我の芽生え始める12歳くらいなんじゃないかと思いました。ひとが初めてアイデンティティを確かにする時期、という意味でその年齢を想定していたことが、無意識のうちに生駒と美馬にも表れたのかもしれませんね。

――アイデンティティの確かさは、恐怖にいかに立ち向かうかにも関連しているのでしょうか。美馬が人を大事にできず、斬り捨てる道を選んできたのは、そうしなければかつて見捨てられてしまった自分を受け入れられなかったのではないかと。自分のアイデンティティを保とうとした結果が今の彼であるならば、本作は、生駒が無名だけでなく美馬のことも救う物語であったように感じます。

無名の願いと幸せを、生駒は守ることができるのか

荒木 そうですね。ただ、生駒にそんな意識はなかったでしょうけどね。最終回の生駒って、笑っちゃうくらい何もわかっていないんですよ。失ったはずの石を無名から渡されるシーンでも、どうやってその石が戻ってきたのかまったくわかっていない。そこにどんな想いが巡っていたのかも。だから、取り戻した感動よりも、どちらかと言うとその手前でぽかんとしていて、無名だけが全部わかって笑っている。それは、どことなく力の抜けた、ほどよいラストシーンだと思いました。温度の低い幸せという感じで僕は好きですね。
 音響監督の三間雅文さんが、アフレコの現場でよく生駒役の畠中祐さんに「お前(生駒)は馬鹿なんだから余計なことを考えるな」と言っていて(笑)。とにかく愚直であるがゆえに、彼はいろんな人を助けているけれど、それはすべて結果的なことであって、美馬のようにすべてを意図して行動しているわけではありません。たとえば無名の本名・穂積が「お米をいっぱい食べられるようにと思って名づけられた」というのも、彼が勝手に思ったことで正しいかどうかはわからない。「だからお前にたくさん米を食わせてやる」という宣言も、無名のことを心底想っているからというより、彼の生き方を押しつけているだけに過ぎないんです。でも、それでいいんじゃないかなと僕は思います。人への思いやりなんて押しつけてなんぼじゃないかと思いますし、そういうものがときに人を救ってくれるような気がするから。押しつけだろうと勝手だろうと、生駒の一方的な宣言が無名にとっては嬉しかった。そのことが、生駒にとっても救いになるような気がしたし、自分の信じるものに向かってわき目もふらずに直進している彼だからこそ、まわりがいろいろ助けてくれる。自分の決めた約束を守るため、命を懸ける。生駒はそれでいいし、それが彼の愛嬌につながっているような気もします。繰り返しになりますが、生駒と無名が愛されてくれることを何より願ってこの作品をつくっていましたし、僕自身が手に入れたいちばん大きなものじゃないかと思っています。

(2016年11月17日、WIT STUDIOにて/取材・文=立花もも、撮影=藤井 徹)

PROFILE

荒木哲郎あらき・てつろう

1976年、埼玉県生まれ。アニメーション監督・演出家。大学卒業後、マッドハウスに入社。2010年に退社し、現在はフリーとして活躍。監督としての代表作に『DEATH NOTE』『ギルティクラウン』『進撃の巨人』など。2013年、『進撃の巨人』で「Newtype×マチ★アソビ アニメアワード2013」にて監督賞、2014年に「東京アニメアワードフェスティバル 2014」(アニメオブザイヤー部門)で監督賞を受賞。同作は「アニメーション神戸賞」や「アニメージュ第36回アニメグランプリ」など数々の賞で作品、脚本、音楽などで評価を得た。

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