SUGOI JAPAN Award2016 マンガ、アニメ、ラノベ、エンタメ小説。日本のスゴイ!を、世界のスゴイ!へ。

日本のスゴイ作品は数えきれない!日々作品を研究している大学サークルのみなさんに、 自分たちの考えるスゴイ!について語ってもらいました。 第1限:エンタメ小説 東京大学 新月お茶の会 (1)ソロモンの偽証 宮部みゆき それぞれに傷を抱えた登場人物たちを、宮部みゆきの優しい筆は誰一人として見捨てない。 (2)機龍警察 月村了衛 迫力のバトルシーン、それを支える確かな警察小説の骨格。脇役までドラマを持つ緻密な小説。 (3)64 横山秀夫 新聞記者としての著者の経歴を生かし、広報課の刑事の矜持を描く傑作。 (4)何者 朝井リョウ 就職活動という等身大の題材が、あまりにも等身大の、醜く、暗い人間の心理を炙り出す。 (5)闇に香る嘘 下村敦史 新人ながら色々なエンタメ要素を混淆し驚きと両立させたエンタメ×ミステリーの大本命。 (6)キャプテンサンダーボルト 阿部和重・伊坂幸太郎 伊坂の洒脱なユーモアと伏線。阿部の重厚たる世界観。両者が融合した日本エンタメの最高峰。 (7)幽女の如き怨むもの 三津田信三 戦争を挟んで三度勃発した花魁の身投げ事件。遊郭の艶やかで残酷な世界に繰り広げられる怪異と論理の妙。 (8)ずっとあなたが好きでした 歌野晶午 ミステリ的驚嘆と恋愛的感動をハイレベルに調和させた巧者歌野の短篇集。 (9)オルゴーリェンヌ 北山猛邦 「物理の北山」だからなしえた美しき世界の悲劇的ミステリ。 (10)ミステリー・アリーナ 深水黎一郎 現代日本ミステリへのシニカルで、挑発的なアプローチ。究極の多重解決を見よ。 (11)盤上の夜 宮内悠介 ボードゲームを通じて到達する超感覚的世界を描くSF。 (12)know 野﨑まど 野﨑まどの奇想天外な展開に、SFの壮大さがプラスされた意欲作。

 ここでは、ミステリ系の推薦作品に絞り、海外作品との関連を対比してみながら、日本のミステリの独特の形について探っていこうと思います。
 (1)『ソロモンの偽証』は中学生によるいじめを題材とし、同級生の不審死をめぐって開かれる学級法廷を舞台としたミステリです。法廷を扱った作品は、先月復刊されたカーター・ディクスンの『ユダの窓』だけでなく、今年刊行されたリサ・バランタイン『その罪のゆくえ』などもあり、古くから取り上げられてきた題材でもあります。そんな中、宮部みゆきの真価が発揮されたというべき点は、登場人物一人一人に心の闇を抱えさせ、しかも誰一人見捨てずに、この法廷の審理を通じて全てを救い上げるドラマを展開した点です。心の闇を抱えた人々は、その痛みのゆえに、時に人を傷つけ、時に罪を犯してしまうけれど、宮部みゆきの優しい筆は、彼ら彼女ら一人一人にそっと寄り添い、救い出してゆきます。その優しさは必ずや国境を越えるものになるでしょう。

 (5)『闇に香る嘘』は、第60回江戸川乱歩賞受賞作であり、第二次世界大戦の中国在留遺児と年老いた盲人を主人公に置いた傑作です。戦争を取り入れた近年の邦訳作品ではケイト・モートン『秘密』やヘレン・マクロイ『逃げる幻』などが思い出されますが、戦争という大いなるものに翻弄された人間の姿が共に印象に残る作品でした。本作でも、戦争は物語の背景に深く根を下ろしています。重苦しい過去の記憶、根底を揺らがすような残酷な真実、残酷さのあとに来る静かな救済……トマス・H・クック『夜の記憶』のような物語が好きな人にオススメですし、ミステリの技巧によって小説上のテーマを描き出すという、近年の日本ミステリに特に際立った特徴を持った作品でもあります。同じような特徴は、(8)『ずっとあなたが好きでした』にもみられるものです。
 (9)『オルゴーリェンヌ』は、アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』のように孤島での殺人を描いた物語ですが、世界観はさらに現実から遊離しており、より人工的なものに仕上がっています。一つのキモはレイ・ブラッドペリ『華氏451度』を思わせる禁書の世界――探偵小説が禁じられた架空の世界なのですが、この世界の作り物めいた質感は、プロローグの美しい挿話、殺人事件の舞台となる海墟、著者独特のトリックの全てに及んでいます。そしてこの人工感の作り込みは決して作品を淡白にすることなく、むしろ奇跡のような趣向を生み出しています。厳かに閉じられる物語には、きっと胸を打たれることでしょう。新本格※1以降、人工的な舞台設定を突き詰めた「到達点」のような傑作です。

 (10)『ミステリー・アリーナ』は深水黎一郎の最新作、「多重解決※2」という趣向を扱った作品です。古くはアントニイ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』で生み出され、最近『薔薇の輪』が邦訳され話題のクリスチアナ・ブランドも、自作の多くで用いている有名な趣向ですが、『ミステリー・アリーナ』ではこれを更に掘り下げ、『どうして多重解決をするのか?』という設定の部分に、奇抜なアイデアを持ち込み、大胆な飛躍を成し遂げました。ちなみに、本作は現代日本ミステリへの痛烈な批判に満ち満ちた意欲作でもあります。海外の人がこれを読んだとき、「こんなことまで日本人は考えるのか!」と笑うのか、「そんなことまで考えなければいけないところまで日本のミステリは行ってしまったのか」と呆れ返るのかどうか……、反応が楽しみです。

※1 1987年の綾辻行人『十角館の殺人』に始まる一連のムーブメントの呼称。アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンなどの古典派ミステリを志向した作家、作品が多く見られたことから「『新』本格」と呼ばれる。主な作家に綾辻行人、有栖川有栖など。今回取り上げた作家では、歌野晶午がこのムーブメントの中で出てきた作家の一人である。
※2 一つの問題編について、単独、あるいは複数の探偵が異なる解決を与える趣向のこと(通常は複数。単数の例として三津田信三の刀城言耶シリーズなど)。本全体の8割程度を解決編にあてる『毒入りチョコレート事件』が代表例であるが、ディスカッションの一環、別解潰しの一環などにも広く利用されている手法である。

東京大学:新月お茶の会
新月お茶の会は、「SF・ミステリ・ファンタジーetc」を柱に掲げるエンタメ系総合文芸サークルです。「総合」と名乗っている通り、カバーするジャンルが広いことが特徴です。会誌「月猫通り」を年4回発行し、創作や評論、特集などを行っています。また、各ランキングへの投票や、即売会などのイベントにも積極的に参加しています。

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