SUGOI JAPAN Award2016 マンガ、アニメ、ラノベ、エンタメ小説。日本のスゴイ!を、世界のスゴイ!へ。

スペシャルレポート 2016 Vol.07 アニメの持つメッセージは きっと世界に伝わる

アニメの持つメッセージは
きっと世界に伝わる

――声優・小松未可子インタビュー

 2010年に声優デビューして以来、『モーレツ宇宙海賊』『ガンダムビルドファイターズ』『ニセコイ』など数々の人気アニメに出演している声優・小松未可子さん。2015年のレギュラー出演は『青春×機関銃』『うしおととら』『純潔のマリア』をはじめ10本以上。「SUGOI JAPAN Award2016」にも選出された『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』、『アルドノア・ゼロ』にもそれぞれメインキャラクターの一人として出演している。女優・歌手としても幅広く活躍する小松さんに、作品や、日本のアニメの魅力についてお話をうかがった。

どんな些細な感情も、掬い上げて“声”で伝える

たとえ同じセリフでも、状況に応じて演じわける

 まず、各部門の「SUGOI20」を見ていただき、おすすめの作品や気になる作品をうかがってみた。

「個人的には『四月は君の嘘』ですね。もともと原作マンガを読んでいたのですが、印象深いアニメでした。命がテーマになっている作品なので、自分は今なにを目標に生きているんだろうとか、生きようとする糧というのはなんだろうということをすごく考えさせられましたね。フィールドは違えど、表現することを仕事にしている立場の人間として、自分の身をなげうってでも何かに打ち込む情熱や、妥協できない点などにも共感しました」

 関わっているアニメ原作のマンガやラノベは必ず読むという小松さん。仕事以外ではどういった作品を読むことが多いのだろう。

「人に薦められて読むことが多いのであまり一貫性はないんですが、どちらかというとファンタジー系や、心が和むような作品が好きですね。……と言いつつ全然穏やかじゃないですが、“SUGOI 20”マンガ部門の中だと『いぬやしき』が好きです(笑)。着眼点がすごいですよね。『GANTZ』やほかの作品もそうですが、奥先生の描かれるマンガにはいつも、日常の中に突拍子もないことが潜んでいて、いつもドキドキさせられます。あとは王道ですが、『僕のヒーローアカデミア』も読んでいます。『宝石の国』は設定が少し難しいんですが、読み心地がすごく不思議で、その世界観にぐいぐい引きこまれてしまいました。これがアニメーションになったらどうなるんだろうって思います。
 まだ読んだことはありませんが、気になっているのは『ダンジョン飯』。最近、勇者を主人公に据えたRPG作品が増えてきていますが、着眼点を変えて王道から少し話の筋をずらしたものも多いと思うんです。ラノベだと『灰と幻想のグリムガル』もそうですね。1月から始まるアニメに出演させていただくので読んだのですが、とても面白かったです。ゲームだと、レベル1のゴブリンなら最初から簡単に倒せてしまうけど、自分がその世界に身を置いたときにどうなるのか、たとえレベル1だとしてもなかなか倒すのは難しいんじゃないか、というファンタジーの中のリアルを描いているところに興味を惹かれました」

 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』も、前回の「SUGOI JAPAN」ラノベ部門で一位に輝いた作品が原作。小松さんは、女の子と見紛う美少年・戸塚彩加役を演じている。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』より戸塚彩加

「アニメ化をする前の、ドラマCDのときから出演している作品ですが、オーディションを受けさせて頂く前から原作小説は読んでいました。まだアニメーションのお仕事を始めて間もない頃でしたし、オーディションに立ち会った原作の渡航先生が『自分の希望のままキャスト化された』とおっしゃっていたので、選んでいただけて、本当に嬉しかったですね。
 戸塚彩加はとても可愛らしい男の子で、彼の可愛さをどう表現するかは毎回、試行錯誤していました。あざとくなりすぎず、自然な男の子らしさを残しながらも、やっぱり聴くときゅんとしてしまうようなトーンを常に心がけていましたね」

 渡先生監修のもと、現場ではアドリブ演技を求められることも多かったという。

「アドリブ自体は特別珍しいことではないんです。台詞はないけれど、キャラクターが映っているから背後で適当にしゃべっておいてください、と言われて役者さんが自由に演じる現場は多々ありますから。でもそれは、どちらかというとコミカルなキャラクターの場合が多く、戸塚彩加はそういう意味で大暴れするキャラクターではなかったので驚きました。たとえば寝言をつぶやくシーンとか、走ってくるキャラクターに向かって掛け声をかけ続けるシーンとか、普通なら彼が言いそうなことを監督やディレクターと相談しながら決めるんですが、『お任せします』と委ねていただけたんです。ただ可愛いだけじゃない、ちょっとシュールな面を出してみたら『それもありだね』と採用されて。オンエアに乗っているのを聴いたときは嬉しかったですね。アドリブを加えることで、私自身、やりすぎにならないギリギリのラインを探りながら彼のキャラクターを深めていくことができて、とても演じ甲斐がありました」

 自由な演技が採用されたのは、それだけ小松さんの中に戸塚彩加というキャラクターが染み込んでいたからだろう。何か、キャラクターを掴んだ実感のあるシーンやセリフはあるのだろうか。

「『八幡!』と主人公を呼ぶセリフですね。シーンとして一番多かったというのもありますが、同じ名前、同じセリフでも、その時々の感情で温度が変わるし、バリエーションを生み出していけるんだと実感しました。もともと、お芝居というのは計算してするものではないと思っているのですが、この台詞はとくに自然に、自分の内側から出せたような気がします。お渡し会などでファンの方から『八幡って呼んでください』と言われることもありますし、観てくださった方にとっても印象的なセリフだったようです。決め台詞を言ってくださいとか、ファンの方自身の名前を呼んでくださいと言われることはあっても、特定のキャラクターの名前を呼んでほしいと言われることはあまりありません。それだけその台詞が作品に馴染んでいるということなのでしょうし、戸塚彩加というキャラクターが愛されている証でもあるのかなと思います」

出番がなくても、キャラクターは世界に生き続けている

 『アルドノア・ゼロ』で演じた網文韻子は、主人公・伊奈帆に想いを寄せる幼なじみであり、火星騎士と戦うパイロットでもある。彼女もまた、ヒロインの一人としてファンから愛されているキャラクターだ。

『アルドノア・ゼロ』より網文韻子

「私が物語の中にいたらこういう立ち位置の女の子になるんじゃないかと思うほど、韻子と私はパーソナルな部分が近くて演じやすかったです。彼女はどこか素っ頓狂なリアクションをとりがちな子だったので、そのぶん印象的なセリフも多いですね。たとえば火星から攻め込まれて必死で戦っている時に、子供より先に逃げてしまった大人に対して『大人ぁ!』って叫ぶんですよ。イマドキの女子っぽい素直な反応ですが、そのセリフには怒りだけでなく、悲痛な叫びや『自分たちがなんとかしなくては』という想いもこめられています。彼女のとっさの一言には短くてもさまざまな感情が存在していて、そのニュアンスをどう表現するかは常に考えていました。彼女もまた演じ甲斐のあるキャラクターでしたね。
 作品自体も、火星騎士と戦うアクションファンタジーという側面だけでなく、自分たちとまるで違う文化を持つ人々とどのように交流していくかという点や、同じ国の味方であるはずなのに大人と子供の間にある闘いなど、さまざまなテーマを内包しています。普通の子供たちがいつ戦いに駆り出されるともしれない日常の緊張感も、韻子のように自分に近い女の子たちが描かれているからこそ身に迫ってきました。とくにこの作品は、演じている私たちも結末を知らされていなかったので、自然とリアリティが加わっていた気もします。わりと初期で、メインだと思っていたキャラクターが死んでしまうなどショッキングな展開があったので、誰もが、自分や身近な人たちがいつどうなるかわからない不安の中で演じていました。結末を知ってしまうとセリフに余計な意味をもたせたりしてしまうから、ということだと思うのですが、『このキャラクターはこの先どうなるんですか』と聞いても、監督も脚本家の方も『お楽しみに』としか言ってくれないので、本当にドキドキしました(笑)」

 キャラクターの人となりだけでなく、世界観全体を丁寧にとらえながら作品に入り込んでいく小松さん。役作りのうえで、何か気を付けていることはあるのだろうか。

「できるだけたくさんのプランを立てるようにはしています。小説と違って、アニメーションの台本にはすべての状況が書いてあるわけではなく、簡単な状況説明とセリフがあるだけ。台本を読んで想像していたことも、下絵をいただいてみるとまるで違っていたということもありますし、どれだけ家で練習していても現場に入ってみないことにはどんな演技が必要とされるのかわかりません。監督や音響監督からの演出を受け、他の方々と演技をあわせながら、少しずつ作品は完成されていくものなので。とはいえ、現場で求められる演技をするためには、自分なりに作品やセリフを解釈しておくことも必要です。セリフにこめられている想いや距離感、温度などを自分で考えて落とし込んでおかないと、演出を受けたときに自然と口にはできません。どのような演出がきても臨機応変に対応できるよう、自分の中でプランニングだけはしっかりしておこうと思っています。
 あとは、仕事を始めたばかりのころに先輩に言われたことも大切にしています。アフレコ(録音)現場では、出番のあるときだけマイクの前に立ち、それ以外のときはうしろの椅子で座って控えているというのが基本。とすると休憩時間になりがちですが、先輩は『自分のキャラクターが映っていない場面でも、突然そのキャラクターが登場してもいいように準備をしておく』、『今そのキャラクターはどこで何をしているんだろうということを考えながらスタンバイしている』と教えてくれました。それ以来、『その場所にいようがいまいがキャラクターは物語の中で生き続けているし、どんな時でも存在していなきゃいけないんだ』ということを、常に頭の片隅に置いておくようになりました」

アニメにこめられた想いは、国や文化を超えて伝わる

 小松さんは、2015年11月28日、29日に中国・上海で開催された「上海ComiCup魔都同人祭」に参加してきたばかり。日本でいうコミックマーケットのようなイベントだというが、海外のマンガ・アニメファンの印象はどうだったのだろう。

「とにかく熱気がすごかったですね。過去に香港で参加したC3というイベントのときも感じましたが、日本のイベントに引けをとらないくらいファンの情熱は強いです。エネルギーだけなら、もしかしたら日本以上かもしれません。みなさん、日本語をよく理解してくださっているのですが、それもすべてアニメで学んだって仰るんですよ。私は、アニメ『K RETURN OF KINGS』(※ネコ役で出演)の紹介で今回のイベントに参加させて頂いたのですが、話のすべてを聞き取れなくてもわかる単語があれば大きく反応してくれましたし、サイン会のときには『以前からのファンです、応援しています』と日本語で伝えてくれる方もいました。中国語を話せないのが本当に申し訳なかったです。アニメだけじゃなく日本の文化にまるごと興味を持ってくれているとも感じました。超満員の会場には、好きなキャラクターのコスプレをしている方もいて、日本のコミックマーケットに参加しているのと印象としてはほとんど変わりません。ときどきTwitterに英語や中国語、韓国語などでメッセージが届くことはありましたが、国境を越えてたくさんの方にアニメが届いているんだと、あらためて実感できました」

 それほどまでに広く深く愛されている日本のアニメの魅力というのは、どこにあるのだろう。

「もともと私がアニメを観て感じていたのは、自分もこうだったらいいのに、自分もこの世界の一部になれたらいいのに、という夢や憧れ。それは子供の頃に観ていたアニメも、大人になった今観ているアニメも変わりません。自分がただ生きているだけでは知ることのできない輝かしい世界を、アニメは私たちに見せてくれるんです。それから、どの作品にも生きていく糧となるような強いメッセージが根底に流れていると感じます。国ごとに文化や風習は異なりますし、アニメで描かれている価値観は日本のものかもしれないけれど、その根底に流れている想いはどの国でも共通するものなのではないでしょうか。私もそういう夢を、アニメを通じて広く届けていけたらいいなと思っています」

(2015年11月30日、読売新聞東京本社にて/取材・文=立花もも 撮影=洲脇理恵(MAXPHOTO))

PROFILE

小松未可子こまつ・みかこ

1988年、三重県生まれ。2010年、TVアニメ『HEROMAN』で声優デビュー。2012年、ヒロイン役を務めたTVアニメ『モーレツ宇宙海賊』のイメージソング『Black Holy』でアーティストデビュー。主な出演作に『ガンダムビルドファイターズ』『青春×機関銃』など多数。また2016年冬アニメでは『亜人』『灰と幻想のグリムガル』『ブブキ・ブランキ』などに出演する。文化放送『LISTEN? 2-3』(月曜)などラジオパーソナリティーも務める。雑誌『声優グランプリ』にて連載中。
https://twitter.com/mikakokomatsu
http://hirata-office/komatsu_mikako

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