スペシャルレポート 番外編 マンガやアニメだけじゃない、パフォーマンスで世界へ! が~まるちょば

 赤いモヒカンの“ケッチ!”と黄色いモヒカンの“HIRO-PON”の二人が1999年に結成したサイレントコメディー・デュオ“が~まるちょば”(“が~まるちょば”とは、グルジア語で「こんにちは」の意味)。今、彼らの、言葉や文化の壁を超えたパフォーマンスが世界各国で評価されている。そう、マンガやアニメだけでなく、日本のさまざまなカルチャー、表現が世界で注目されているのだ。今回は、海外へ挑戦しつづけてきた“が~まるちょば”のお二人に、日本文化をさらに世界に広めるにはどうしたらいいかをうかがった。

世界各地で活躍する
が~まるちょば

――これまでどのくらいの国で公演してきたのでしょうか。


ケッチ 35か国、参加したフェスティバルは200を超えていると思います。最近もイギリスのエディンバラに1か月行ってきたところですが、この3、4年は海外に行くのは年2か月程度で、日本中心にやっています。


――エディンバラ・フェスティバルは世界最大の演劇祭ですが、が~まるちょばは、2004年にはダブルアクト・アワード、2005年にはタップウォーターアワードを受賞していますね。


ケッチ エディンバラ・フェスティバルには2000年から下見を兼ねて毎年行っています。2004年はスタッフを連れて約1か月舞台作品を上演した最初の年で、その成功がきっかけで、世界のフェスティバルに呼ばれるようになったんですね。


パントマイムにもにじみ出てくる
日本的なものとは何か


――が~まるちょばは、最初から全世界でウケルものを狙っていたのでしょうか。


ヒロポン 僕らは、意識して日本的なことをやろうとしていません。パントマイム自体がそういうものだからです。パントマイムはジェスチャーとよく誤解されますが、ジェスチャーというのは言葉を身振り手振りで伝えることです。それに対してパントマイムは、言葉を使わない身体表現です。例えば、僕らはスポーツを見て感動することがありますが、それは、選手の一生懸命さが伝わってくるからです。それと似ていると思いますね。


ケッチ しゃべらずに何かを訴えかけようとすると、必然的に人間誰もが持っている気持ち、つまり、うれしい、悲しい、憎い、楽しい、好き、嫌いといった感情にフォーカスせざるを得ません。そういう、喜怒哀楽は世界中の人間に共通するものだと思います。
 ただ、自分たちは意識していませんが、海外で時々、「きみたちの動きはアニメみたいだね」と言われることはありますね。


――それは、どういうところですか。


ケッチ 自分たちは意識していないのであくまで想像ですが、例えば、急にスローモーションになったり、最初二人で正面を向いて走っていたのが、カメラアングルが変わるように同時に横になるといったところだと思います。そういう映像的な表現にアニメ的なものを感じるんだと思います。


ヒロポン 自分たちがそれ以上に日本的と感じるのは、細かいところに気を使うところですね。ヨーロッパは作品の作り方が大味です。例えば、日本人なら人が転ぶ場合でも、何か伏線があって転ぶということを考えますが、あちらは転んでそれで終わり。ストーリーの見せ方にはあまり気を使わない。


ケッチ スタッフも違います。日本のスタッフは細かい気遣いをしてくれます。例えば、お客さんの入場が遅れて5分開演が延びたとき、楽屋に戻るのはめんどくさいし、袖で待っていようかというときに、日本のスタッフならさりげなく椅子を用意してくれます。海外だと、まず、そんなことはない。
 僕らがニュージーランドのフェスティバルで公演していたとき、楽屋で「最初の笑いが収まりかけた瞬間に、もうワンテンポ早く」みたいなことを打ち合わせていたことがあったのですが、ヨーロッパの出演者に「そんな真剣な顔で何を話してるの?」と聞かれたことがあったんです。「こういう話をしてるんだよ」と言ったら、「エーッ! そんな細かいことまで考えて、つくっているの?」と言われたことがありましたね。


ヒロポン 逆に言うと、日本のお笑い芸人のクオリティーはすごく高いと思いますね。ネタの作り方、構成、声の出し方、表情、間といった言葉に頼らない部分をピックアップしても、非常にクオリティーが高い。日本の芸人で海外に出て行こうという人が少ないのは1億2000万人という、そこそこ食えるマーケットがあるからです。もし日本がもっと小さい国だったら、海外に出て行こうという芸人は増えると思いますね。


才能をバックアップする
「お金」と「ご意見番」が必要

――そういう日本のポップカルチャー、サブカルチャーが世界に出て成功するには、どういうことが必要だと思いますか。


ケッチ 「クールジャパン」として国が積極的に日本文化の海外進出に乗り出すと聞いた時、「やっとか」と思いましたね。僕らが実際に参加してきたエディンバラ・フェスティバル・フリンジでいうと、今年はブラジルの面白そうな作品がいくつかあったのですが、行くと、立派なパンフレットが用意されていたんです。ブラジル政府がお金を出して、参加者の渡航費から滞在費、宣伝費をバックアップしていたのだと思います。同じようなことを、マカオもやっていました。それから韓国も最近は以前ほどの勢いはなくなりましたが、国と企業が一緒になって参加者をバックアップしていました。
 一方、日本は、僕らが参加して10年以上たちますが、そういうことを一度も聞いたことがありません。僕らは何のサポートもなく、自分たちの手弁当だけでやってきた。今の若い人たちも同じような苦労していると思うのです。ストレートに言ってしまえば、日本文化を世界に広める上で大事なポイントは「お金」です。あと必要なのは、そのお金を、ちゃんと実力や才能のある人を見分けて渡せる「ご意見番」ですね。


――ご意見番には、どういう人がなったらいいのでしょうか。


ヒロポン 作品のクオリティーを見抜く目を持ち、それをプロデュースする能力を持った人です。日本文化を世界に広めるにはと聞かれて、ケッチ!は「お金」と躊躇なく答えましたが、僕は間違いなく「作品」と答えます。いい作品を作ることにとことんこだわる。エディンバラの1か月間のフェスティバルでも、面白いものは口コミで広がっていきますが、つまらないものは誰も見に行かないわけです。でも、同時に自分の好き嫌いではなく、作品をプロデュースする能力がないと成功しない。こういう意見の違う二人が合わさって、うまくいっているのが、が〜まるちょばだと思うんですね。

(読売ADリポート『ojo』Oct/Nov 2014.より)

PROFILE

が~まるちょば

パントマイムのソリストとして活躍していた ケッチ!(赤いモヒカン)と、HIRO-PON(黄色いモヒカン)が運命的な出会いを果たし、1999年に結成したサイレントコメディー・デュオ。言葉や文化を超えたパフォーマンスが高く評価され、"世界が認めたアーティスト"としてこれまでに30ヶ国を超える国々のフェスティバルなどから招待され、その数は200以上にのぼる。1年の約半分を海外公演に充てていたが、近年は国内の舞台公演を中心に活動している。しかし現在も世界中から数多くのオファーが後を絶たず、海外公演と国内公演の両立を果たしている。Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人100」に選出。2010年、言葉を一切使わない役者集団『が~まるちょばプロジェクト』を旗揚げ。公演やライブの情報は、が〜まるちょばHPにて随時発表!www.gamarjobat.com